2020年10月末に夫婦で会社を設立した。「夫婦で起業しました!」と格好良く発信する未来を想像していた私たちだったが、入籍する事が決まり、大きめの仕事が入ってきた事から必要に迫られて急いで会社を設立した。
時間も無い、お金も無い、知識も無い、という素晴らしい無いっぷりだったが、それでも最新のサービスを使えば会社は作れてしまう。
会社設立時が入籍より前だったので登記簿には私の旧姓が載った。お金がないので入籍後の氏名変更も自分でやる事になり、気が狂いそうなほど面倒だった。ご覧の通り計画性も無い。
彼に出会って社会への中指が立った
2017年に会社で今の夫に出会った。私たちが最初に意気投合したのは「飲み会で会社の愚痴を散々言うのに、次の日にはまたみんな何も無かったように出社してるのおかしくない?」という尖った話題だった。会社という組織にきれいに飲み込まれた上司達に違和感を覚えた。
会社という組織から抜け出して独立したい!と本気で思い始めるのに時間はかからなかった。そこから思い付くままに色々な事をやった。本当に色々。お金も知識も計画性も無い代わりに行動力だけがあった。
2018年に入る頃には会社を辞めて、"フリーランス"を名乗っていた。
自分を生かせてればまあいいか
しかし、社会経験もそこそこに独立して上手くいくはずもなく、もがく期間がそこから2年ほど続く。
悩んで悩んでめそめそ泣く日もあったし、生活費の為に深夜のバイトへ行ったりもした。喉が渇いて飲み物を買おうとしても、お金が無くてためらう自分がいて、虚しくなった。あの時の気持ちは今でも忘れない。
"フリーランス"という格好つけた肩書きを名乗りつつ、ただのフリーターである現実の自分に落胆して不安は尽きなかったが「まあ、日本は生活保護があるから簡単には死ねない」という謎の盾で毎日を乗り切っていた。とりあえず自分を生かしていければ、まぁ、いいか。と思っていた。
彼も同じくずっともがいていた。
きっと周りからは海にぷかぷか浮かんで楽そうな2人。しかし、水の中を見てみれば、溺れないように必死に立ち泳ぎをしている2人であった。
そんな中でも恋人同士で一緒に生活を営めていたのは結構すごいことかもしれない。
中指がゆっくり折れた
なので、私たちは完全に粘り勝ちで会社を作った。「会社員になんてなってやるか」という中指がギリギリ立ち続けていた。
そして、会社の1期目が終わって今、私が思うことは
会社員って最高だよな
ということである。いやぁ、びっくり。びっくり仰天。
「会社員になんてなってやるか」と中指を立て続けた結果がこれである。
会社をやってみて、会社を経営するのにどれだけお金がかかるか、社員にどれだけお金がかかるか、を身をもって知った。
会社や社会は働く人をすごく守ってくれる。雇用主は社員に健康診断を受けさせないといけない法律があるだなんて。子どもを産んだ後に1年間お金がもらえる育休も会社員での特権である。
モンスターを飼ってくれてありがとう
半分サークル気分で働いていた20歳の自分に、交通費を出して、健康診断を受けさせて、綺麗なオフィスを用意して、お菓子もお水も用意して、それでも給与として20万以上払ってくれていた会社.......本当にありがとう。どんだけ良い会社だったんだ?
それなのに社宅を作ってくれだの上司が気に入らないだの言って、社内で彼氏だけ作って会社を辞めた私はもはやモンスターである。
全社員Windowsの会社に入って「Macじゃないと仕事できない」と言ってMacを買わせたのに、半年で会社を辞めた事もあった。完全にモンスターである。
自分が会社をやる立場になってから、会社という組織に立っていた中指はゆっくり折れていった。むしろ感謝してもしきれない。会社をやってる人は全員すごい。そこで働く人も全員すごい。
会社の歯車になるなっていう人は一旦、歯車を回す側になってみたらいい。会社員って最高だよなって思うはずだから。